「女らしさ」とは何か (与謝野晶子 ) - Solami Kyoushitsu

「女らしさ」とは何か (与謝野晶子 )

女らしさとは何か(1921年)

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 その人たちの言う所をかいつまんで述べますと、女子が男子と同じ程度の高い教育を受けたり、男子と同じ範囲の広い職業に就いたりすると、女子特有の美くしい性情である「女らしさ」というものを失って、女ともつかず、男ともつかない中間性の変態的な人間が出来上るからよろしくないというのです。

かいつまんで述べる のべる…decir algo resumido
程度    ていど… nivel
職業に就く しょくぎょうにつく… tener trabajo
女子    じょし… chica, mujer
特有(の) とくゆう…propio
**性情   せいじょう…Característica innata de una persona
女とも附かず、男とも附かない 
おんなともつかず、おとこともつかない No es ni mujer ni hombre (no pertenece a ninguna categoría)
*中間性   ちゅうかんせい…osculant(ENG) tener características de dos categorías (género/sexo en este caso)
**変態的   へんたいてき…anormalidad; hoy en día se refiere más a la perversión)



 私は第一に問いたい。その人たちのいわれるような結論は何を前提にして生じるのですか。一般の女子に中学程度の学校教育をすら授けないでいる日本において、また市町村会議員となる資格さえ女子に許していない日本において、どうして、男子と同等の教育とか職業とかいうことが軽々しく口にされるのですか。女子に対してまだ何事も男子と同等の自由を与えないで置いて、早くもその結果を否定するのは臆断も甚だしい(はなはだしい)ではありませんか。

結論      けつろん… conclusión
前提      ぜんてい…premisa
生じる     しょうじる… producirse
一般      いっぱん…general
中学程度の学校教育  
ちゅうがくていどのがっこうきょういく
…la educación escolar a nivel de escuela secundaria
授ける     さずける…dar, otorgar
市町村会議員  しちょうそんかいぎいん…concejal
資格      しかく…calidad, capacidad, derecho
許す      ゆるす…permitir
同等      どうとう…igual, equivalente
職業      しょくぎょう… profesión
軽々しい    かるがるしい…fácilmente
口にする くちにする…hablar / comer
与える      あたえる…dar
否定      ひてい… negación
臆断      おくだん…conjetura
甚だしい    はなはだしい=ひどい、とんでもない
Ej. 人をばかにするのも甚だしい
 Eso es una tomadura de pelo.

 それよりも、論者に対して、もっと肉迫して私の問いたいことは、女子が果して論者のいうような最上の価値を持った「女らしさ」というものを特有しているでしょうか。私にはそれが疑問です。
 論者は、「女らしさ」というものを、女子の性情の第一位に置き、その下にすべての性情を隷属させようとしています。女子に、どのような優れた多くの他の性情があっても、唯一つの「女らしさ」を欠けば、それがために人間的価値は零(ゼロ)となり、女子は独立した人格者でなくなるというのが論者の意見らしいのです。私は疑います、「女らしさ」というものが果してそんなに最高最善の標準として女子の人格を支配するものでしょうか。

論者      ろんしゃ…polemista
**肉迫する    にくはくする…acercar
最上(の)   さいじょう…primera calidad
価値      かち…valor
疑問      ぎもん…duda
**隷属      れいぞく… sujeción
優れる     すぐれる…ser excelente
唯一つ     ただひとつ…sólo uno
欠く      かく…faltar
人間的     にんげんてき…humano
独立       どくりつ… independiente
人格       じんかく… personalidad
疑う       うたがう…dudar
果して・果たして はたして…en realidad
最高(の)    さいこう…supremo
最善(の)    さいぜん …mejor
標準      ひょうじゅん… estándar
支配      しはい…dominio

 そもそも、その「女らしさ」という物の正体は何でしょう。我国では女子が外輪(そとわ=そとまた)に歩くと「女らしくない」といって批難されます。また女子が活溌な遊戯でもすると「女らしくない」といって笑われます。そうすると、内輪(うちわ=うちまた)に歩くということ、人形のようにおとなしくしているということなどが「女らしさ」の一つの条件であることは確かです。

正体     しょうたい…figura verdadera
我国     わがくに…mi país
***外輪(そとわ=そとまた)andar como un pato
批難     ひなん… crítica
活溌(な)  かっぱつ(な)
…animado, activo, energético
*遊戯     ゆうぎ… juego
***内輪(うちわ=うちまた)…andar patituerto
人形     にんぎょう…muñeca
人形のようにおとなしくしている
Estar sumiso(obediente) como muñeca
条件     じょうけん… condición

 しかし日本ではそうでしょうけれども、欧米の女子はことごとく外輪で歩いています。また我国でも多くの女学生が唯今は靴をはいて外輪に歩きます。また欧米では、戦後に一層女子の体育が盛んになり、女学生の帽や服装に男子と同じものを用いてまで、活溌な運動に適するように努力しています。そうして、それがために「女らしさ」を失ったという批難が欧米において起らないのを見ると、論者の有難がる「女らしさ」というものは、全人類に通用しない、日本人だけのものであるように思われますがどうでしょうか。

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欧米   おうべい… Europa y América del norte
ことごとく  …sin excepción
唯今 ただいま …ya, justo ahora,ahora mismo
戦後     せんご…posguerra
一層     いっそう… aún más
体育     たいいく… educación física
盛ん(な)  さかん(な)… activo
**帽      ぼう… sombrero
服装     ふくそう
… (Forma de llevar) vestido
用いる    もちいる…usar, emplear
運動    うんどう…movimiento, deportes
適する    てきする…ser adecuado
努力する   どりょくする… esforzarse
有難がる   ありがたがる
…(alguien) da valor a algo, apreciar algo
全人類    ぜんじんるい…toda humanidad
通用する   つうようする…ser válido


Es una palabra que…
*No se usa mucho.
**Usa menos.
***No se usa en la vida cotidiana.


あなたの気持ちを言葉にしましょう。

1)『女らしさ』について、あなたの意見を書いて下さい。

2)この文章が書かれた1921年と今の日本では、状況はどのように変わりましたか?

3)『欧米の女性』についての記述を読んで、どう思いましたか。

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